志賀煎餅は、大正15年(1925年)に和菓子店として創業しました。その後 昭和20年(1945年)に志賀さとと息子の善一が南部せんべい専門店に転向して以来、代々南部せんべいひとすじ、昔ながらのおいしさを皆さまにお届けしています。南部せんべい専門店に転向した当時(昭和20年代前半)に使っていたレンガ造りの「二枚型焼成機」は、志賀煎餅の歴史と思いを語る貴重な資料として、今でも大切に保管しています。

南部せんべいは、古くから岩手県や青森県を中心とする南部地方で親しまれてきた家庭の味。そのままいただくのはもちろん、湯をさしてお茶代わりに、農作業の合間にはお赤飯やおかずを取り分けるお皿代わりに、大勢が集まる寄り合いでは野菜とともに煮込んで鍋料理にと、さまざまな形で食され、人々の生活に寄り添ってきた食品です。

まるで東北人の純朴な心のように、歯ごたえがありながらも、やさしくどんなものにも調和する南部せんべい。わたしたちはこの味わいを、変わらぬ製法と心で守り続けています。

創業当時は近隣の家庭からそれぞれの畑で採れた小麦が持ち込まれ、それをお菓子に加工して工賃をいただくのがわたしたちの主な仕事でした。中でも日持ちのする南部せんべいが好まれるようになり、戦後間もない昭和20年、南部せんべい専門店に転向したのです。

時は流れて、畑で採れた小麦は製粉工場で製粉されるようになり、わたしたちは製粉工場から小麦の粉を仕入れるようになりました。三代目 中村義雄があらゆる粉を吟味し、最も南部せんべいに合う味わいの「南部小麦」を使うと決めてから、現在までそれを守り、「南部小麦」100%の南部せんべいをつくり続けています。

「南部小麦」はほんのり黄味がかっていてきれいに焼き上げるのが難しく、含まれる水分量も毎回違うため生地のかたさの調整も簡単ではありません。常に新鮮な粉でおいしい南部せんべいをつくるのにも苦労を重ねてきました。たくさんの困難がありながらも、わたしたちはお客さまと共に、職人たちと共に、志賀煎餅ならではの味をつくりあげてきたのです。

南部せんべいは、南部地方の生活に深く根付いた味。昔は南部鉄の焼き型を持つ家庭もあり、お母さんやおばあちゃんが、家事や農作業の合間にせんべいを焼く姿が見られました。子供たちが小遣い銭をにぎりしめて、型からはみだした"耳"を買い求めるのも懐かしく思い出される光景です。

わたしたち志賀煎餅の南部せんべいは、すべて手づくり。今でも南部鉄の焼き型を使った昔ながらの手焼きの製法を守っています。「南部小麦」や天然塩など素材も厳選し、添加物も南部せんべいづくりに必要な重曹以外は極力使用していません。昔は当たり前だった安心とおいしさを、今も守り続けるためのこだわりです。

さらに、ココアやリンゴを使ったもの、さまざまな味わいの「南部スナック」など、新しい商品も幅広く取り揃えています。 未来を担う子供たちへ、昔ながらの"安心・おいしさ"と、新しい"楽しさ"を。自然の恵みや人の手のぬくもりに感謝する心と共に、豊かな食の広がりをお伝えします。